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『生まれてこないほうが良かったのか?』(森岡正博)
ちまちま読んでたせいで読了に1ヶ月かかった。もう前半の内容何も覚えてないや、、
辛いことばかりで投げやりになってると、ベネターやショーペンハウアーの反出生主義に惹かれてしまう。幸福の定義も不幸の定義もわからないのに不幸の具体例だけがどんどん増えていくだけの人生を、また別の人にも送らせてやろうだなんて!!??っていう。でもそれって突き詰めれば、たった一点でも苦しいことがあれば人生全部台無しだという潔癖的思想に行き着くんだなーと思った。そしてそういう思想はどう考えても不自然すぎる。過去が苦しかったからこその悦びだってありふれてるし。
著者の主張する誕生肯定は、別に「人生最高!YEAH!」ってことではない。「別の可能世界に生まれたいとは思わない」事が十分誕生肯定だそう。否定形での消極的な定義付けだからなんかできそうという気にもなるけど、まあそれもめちゃくちゃ難しいよな~~
ロング版座右の銘にしている『四畳半神話大系』の一部分を思い出したので貼ります。

「我々の大方の苦悩は、あり得べき別の人生を夢想することから始まる。自分の可能性という当てにならないものに望みを託すことが諸悪の根源だ。今ここにある君以外、ほかの何者にもなれない自分を認めなくてはいけない。君がいわゆる薔薇色の学生生活を満喫できるわけがない。私が保証するからどっしりかまえておれ」Close

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『NAME』(児玉雨子)
読了直後の心の中の自分が「これはあれだね。『名前』がテーマだね。」等と小泉進次郎構文をかましてしまった。
私は完全に「ジュニアアイドル、あーはいはい現代の”闇”ね」で読んだクチだった。ほぼ尾沢さんと一緒。無関係な大勢の人々が”闇”の一言で葬って、その中に実際にいた人をも葬る残酷さよ。高田かやさんのカルト村シリーズをちょっと思い出した。
出てくるものすべてが象徴的だった。両クスや夢小説から、マクドのポテトから、「みさ」「ゆき」まで...
あと装画めっちゃ好き。Close

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『語学の天才まで一億光年』(高野秀行)
こんなに面白い作家さんを今まで存じ上げてなかったのが痛恨の極み。世界漫遊記も大好きだし、それに裏打ちされた考察も本当に面白い。
そもそも私は「文字のない言語」のイメージがなかった。もちろん世界には何千もの言語があってその多くは文字がないことは知識としては知っていたけど、「言語はあるけど、文字がない状態」の想像すらつかなかった。自分が名前を聞いたことがある言語は全部文字があるし、自分自身日本語の文字を割と早く覚えたし(←これはただの自慢)、英語も一番最初はアルファベットから習ったからだ。でも、標準ワ語をワ州の村の子供達に教えるくだりの、「標準語は文字に支えられており、文字の力で他の言葉を迫害するのだ」という文言を読んで、自分の視野狭窄を恥じた。”世界の言語の多くが消滅の危機に瀕している”という言葉の意味がようやくわかった。あと、関係ないかもだが、中島敦の『文字禍』を思い出した。
てか何カ国語も喋れることなんてまあまあ普通のことなんだな...特にアフリカとかだと。日本語と英語(※スピーキングを除く)しかできない自分が情けない。Close

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感想は書いてないですけど最近の初読の本はあとはこんな感じです👇
『教養悪口本』(堀元見)
『恋文の技術』(森見登美彦)
『きみの友だち』(重松清)

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『舟を編む』(三浦しをん)
「え?今まで読んだことなかったん?」シリーズ。あああれでしょ、辞書の話でしょ、映画化してたやつ、という理解だけで今まで来たけど、なぜか長編のイメージがあって敬遠していた。実際に本を見たら思ってたよりもだいぶ薄くてびっくりした。意外とすぐ読めた。読みながら辞書についてどんどん詳しくなれるし、辞書が欲しくなる。いいかげん三省堂国語辞典買おうかな、、読み終わったあと表紙を見たらまた違うものが見えるのもすごく粋。映画に鶴見辰吾出てそう(?)と思って調べたら、端役とはいえ本当に出てた笑Close

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『ワンダーランド急行』(荻原浩)
読み終わってから新聞連載の小説だと知って、納得感があった。軽すぎず重すぎず、それでいて話が明快だから、毎日ちょっとずつ読むの楽しいだろうな~
主人公賢すぎでは??こんなしっくり異世界(しかも自分の周囲の人間のメンツは同じ)に適応できないって、、私は「違う!私は別の世界から来たの!!信じてってば!!」等と発狂して泣き叫ぶ自信がある。「ろくでもない毎日」だって、小さな選択の積み重ねで生まれた唯一無二のものなんだなあClose

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『骨灰』(冲方丁)
こわいよお(小並感)
まあ正直自分にはあまり合わなかった。「劇的にめちゃくちゃ怖い出来事が起こる!!」というよりは日常を淡々と恐怖が、骨灰が侵食していく感じだったから、ページをめくる手が止まらないということがなく、読むのにやたら時間がかかった。やっぱ夏にひんやりしたいなら『残穢』が私は1番好きです。
でも「睡眠中に喉がはりついて呼吸ができなくなるのは脱水症状のサイン」ってのは普通に役立つ知識だった。ちょうどこの箇所を読む数日前に、寝ようと思っても原因不明で喉がはりついて上手く息ができなくて怖い思いをしてたので...こんなところであれの原因を知ることになるとは思わなかったClose

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『夜と霧』(ヴィクトール・E・フランクル)
この本を読んだことがないと言う私に、読むようにと勧めてくれた人が「泣かずには読めない」と言っていた理由がよく分かった。感動ではなく、あまりの重々しさと辛さ、そして崇高さに涙を流さずにはいられない。家族も友人もみな理不尽に殺され、今まで積み重ねてきた財産も地位も全て奪われ人格を完全に否定され、自分自身いつ死ぬかわからない状況で苦役に勤しむ終わりの見えない収容所生活を送る。これよりも辛いことなんてそう考えつくものではない。というかこのことを、「辛い」とかいう自分の日常的な語彙で表現するのも申し訳ない。でも、そんな中でも人間は人間らしくいられるということを彼は最も訴えたかったのだろう。先哲の言葉の引用もすごく心に響く。
「なぜ生きるかを知っている者は、どのように生きることにも耐える」(ニーチェ)
「わたしが恐れるのはただひとつ、わたしがわたしの苦悩に値しない人間になることだ」(ドストエフスキー)
...自己憐憫ほどくだらなく、そして卑しいものはないと痛感した。自分の苦悩に値する人間になります。そう胸を張って自分に言えるような人間になります。Close

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『ノルウェイの森』(村上春樹)
いや今まで読んでなかったんかいって話なんですけどね。こういう、教養を身につけて精神的に成熟してから読もうと思ってた本(作家)が結構あります。これほど既にいろんな解釈や文学的考察がなされている作品に今更陳腐な感想を書くのも恥ずかしいんですが、あくまで記録ってことで見逃してください。
まず、自分の教養の無さがあらわになった。「あーこれなんか元ネタあるんやろうけど何だろうなーわからんなー」の繰り返し。30年後位に読み返してちゃんと元ネタまで理解して、クスっと笑えるようになってたらいいんですけど。
そして「限りない喪失と再生」がテーマだと知って読んだ上で最初、一瞬でも「再生?どこに再生があんの?」と思った自分が恥ずかしい!!きれいさっぱり忘れてしまうのは再生じゃなくて逃避だっての。痛みも傷も抱えてそれでも生きていくことが文字通り「再生」ってことなんですね。ニーチェみを感じる。
すごくすっと読めるのに、このモチーフは何を象徴しているのだろうかと考え、何度でも何度でも読みたくなる。Close

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『人はどう死ぬのか』(久坂部羊)
昨年大好きだった祖母が突然亡くなって、否応でも死について考える日々を送ってた時に手に取った本。自分の死なんて正直全く想像付かないが、先駆的覚悟性ってことよな~~と思いました。そりゃ考えることから逃げてたら下手な死に方するよな...
パプアニューギニアのウィッチドクターの話が興味深かった。科学がこれだけ広く信仰されている時代の呪術医療ってのも興味深いし、何より「歯が抜け、目が見えなくなって、脚が弱って歩けなくなったら、それが死ぬときだ」という彼の発言。医療の意味を考えてしまう、「死亡率」という冷静に考えたら訳わからん言葉の意味も。とはいえ歯が痛くなれば歯医者に行くし、盲腸になれば内科に行くし、骨を折ったり関節が痛くなったりすれば整形外科に行くけどさ...
自分の死(あるいは家族の死)が迫った時に「人間は絶対死ぬから」と穏やかに受け入れるのは相当難しいし、やっぱり死ぬのは怖い。でもみんないつか死ぬことを忘れてはならないし、考えることを止めるのもよくはない。Close

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『100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集』(福井県立図書館)
見てすぐ分かるようなものから、絶対無理としか思えないものまでいろいろあった。

×『ドクタードリンク宇宙へgo』
○『ドリトル先生月へゆく』

×『なんとかのカバン』
○『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』

×『これこれちこうよれ』
○『日日是好日』

×昔からあるハムスターみたいな本
○『ハムレット』

元のサイト も初めて知ったけど面白いな~Close

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『アルジャーノンに花束を』(ダニエル・キイス)
今までなんとなくこういうザ・王道の本を避けてきたせいで「今更読んでないのも恥ずかしいしな...」という自意識過剰が働いて余計読まなくなるという悪循環に入ってたけど、多くの人が良いって言ってる本はそりゃ悪い本ではないだろうし読んで損はないだろうから今年はこういう超有名なド定番に触れていきたい。あと初対面の人とかに読書が趣味ですって言った時に、有名な本の話を振られて自分が読んだことがなかったらなんか困る。
人間って自分の知能以上にも以下にもなれないのに、それを操作して書いてるのが本当に上手いなと思った。そして原文が気になる。冒頭とか、英語ではどう書いてあるんだろうなあ。非ネイティブには読めない(理解できない)気がするけど。Close

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『暇と退屈の倫理学』(國分功一郎)
忙しすぎて全然本読む時間がなくて(正確には時間はあったけどなんか読む気にならなかった)ちょびちょびチンタラ読んでたけど、それでもちゃんと頭に入ってきた。ちゃんと章ごとに復習を入れてくれるから間が空いてもついていける。それぐらい文章が読みやすくてわかりやすい。タイトルは難しく見えるけれど、本当に誰にでも勧められる本だと思った。
別に目からウロコがボロボロ落ちるような、退屈が一瞬で無くなる方法みたいなものが書いてあるわけではもちろんない。この本で問われている主題(豊かさを手にした私たちは「心の底からやりたいこと」をやっているのか?そもそもそんなもの元からあったのか?全部全部くだらない気晴らしに過ぎないのでは?)も、そして結論も、字面だけ見ればそこまで目新しいものではない。むしろ自分が今まで何万回も考えたことがある「勉強する意味」と大体同じだった。でも読む意味がなかったというわけでは全くない。”暇と退屈”という観点からそれを捉えられたことはすごく嬉しかったし、今後生きていく上での希望にもなるだろうと思った。この本はこれから何回も何回も読んでいきたい。
あと本題には関係ないけど第2章の「暇と退屈の系譜学」で紹介されてる「定住革命」の概念がすごく勉強になった。決められた場所で排泄するのは当たり前でもなんでもないんだな、、定住は「進んで」やったのではなく、「仕方なく」起こったこと。(確かに言われてみれば当然だなあ)Close

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『電通と博報堂は何をしているのか』(中川淳一郎)
タイトルに共感しかない。で、結局何してんの?という。何してるかよくわからないのに給料が高いからあれだけ嫌われるんだとも書いてあった。広告業界の良い所も悪い所も伝わってきた。まず悪い所は、言うまでもなく長時間労働(時間をかければかけるほど良いものになるし、そうすればクライアントに「忠義」を見せられる)への信仰。何もしないくせにクライアントに「忠義」を見せるためだけに集合3時間前にイベント会場に大人数で集まる電通社員などなど。目的置いてけぼりで手段が次第に目的化されているのがなんかすごく...日本だなあって思った。でも、広告はミスしても誰も死なない仕事だからこそ好きなようにできるのは良い所。
デジタルは雑誌広告やテレビCMなど今までの媒体と異なり24時間修正可能でいくらでも変更がきく分、よりブラック化していく傾向にあるそう。とはいえ新しい分野だから育成のために新入社員を重点的にデジタル系の部署に配属させる。その結果起こったのが電通の過労死事件。Close

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『決定版 マインド・コントロール』(紀藤正樹)
初版が出たのは結構前だが、統一教会の手法が再び批判を浴びたことをきっかけに増版がかかったみたい。正直まあそんな目新しいことは書いてなかったなという印象。しかし、「カルト」という言葉の定義についてはなるほどねと思える記述もあった(カルトに厳密な定義付けをすることは不可能なので、カルトという言葉を帰納的に使うことはできても演繹的に使うのは無理だ)。これはカルトだけじゃなくてマインド・コントロールという言葉に関しても同様。法規範と社会規範に逸脱しない限りは認められる、認められなければならない。ただそれが逸脱したときにすぐに対処できるようにしないとな...Close

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『三省堂国語辞典のひみつ―辞書を編む現場から―』(飯間浩明)
ゆる言語学ラジオをちょっとずつですが聞いてるおかげで最近、無機質なように見えてちゃんと裏に人間の営みがあるという辞書の面白さに目覚めました。この本で、その”人間の営み”の解像度が上がりました。どの用例を引くかとか細かい追記とかまで深く考え抜かれて作られているものなんだなって...
国語辞典をとりあえず一冊通読してみようと思っているのですが、その一冊目を新明解にするのか三国にするのかより悩ましくなってきました。
表紙にも三国への愛が溢れていて本当に素敵な本でした。Close

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『ロシアのユーモア』(川崎浹)
ロシア独特の機知と笑いに満ちた小話、アネクドート。帝政以降のロシアの歴史をその時代のアネクドートと共に振り返っている。ソ連時代のが一番面白いしおしゃれな気がした。いくつか面白いの引用。

”コルホーズの集会で議長が最初に発言した。
「今日の議題はふたつあります。第一は納屋の修繕で、第二は共産主義の建設についてです。しかし、板がないので、早速、第二の問題に移りましょう」”

”「共産主義者とはだれをさすのか」
「共産主義者とは、マルクスとレーニンの本をすべて読んだ者のことである」
「では、反共産主義者とはだれをさすのか」
「反共産主義者とは、マルクスとレーニンのすべてを理解した者のことである」”

”ブレジネフがコスイギンにいった。
「国境を開放するように世論が要求しているが、もし自由に出国を許すと、わが祖国には我々二人しか残らないのじゃないかね?」
するとコスイギンがいった。
「二人しか残らないというが、それは君と、ほかにだれなんだい?」”

↑これらは私でも面白いと思えるぐらいだからわかりやすい方なんだろうなあ...教養が足りないからのか人生経験が足りないからなのかわからないけど、面白さがいまいちわからないものも結構あった。
あとロシアでは気温が下がることを「上がる」と言うらしい。ポジティブすぎでは?Close

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『BUTTER』(柚木麻子)
絶対に関わりたくないと思いつつもなんか心に引っかかってしまう人って確かにいるなあ
男女とかそういうテンプレの二項対立にはめて読もうとするとだめだな...
世間の評価とか気にせずその時自分が一番食べたいもの、自分に一番必要なものを自分で分かってあげて、それを手に入れたり作ったりする能力がある人のことをグルメって言うんだなあと思った。確かに今心の底から食べたいものを聞かれても私は答えられない。
そして食べ物の描写がいちいち美味しそう。バター醤油ご飯に始まり、ラーメンに最後の七面鳥。食欲が刺激される。Close

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『22世紀の民主主義』(成田悠輔)
民主主義=選挙ではない!!!と実感させられた。民主主義はもっと根本的な「お前1人の考えが常に絶対正しいなんてことないから、物事を決めるときはみんなの意見聞いて決めよう」という発想のことで、正しい/間違っているとか以前に至極真っ当な考え方だなと思った。そして「お前が絶対正しいわけじゃない」という民主主義の発想から考えれば、現代の社会みたいに民主主義の形態が選挙だけっていうのは明らかにおかしい。
その選挙だけの民主主義に取って代わるべきだとして提唱されてるのが、無意識データ民主主義。最初に読んだときはブラックボックスやんと思ってぞっとしたけど、既に暮らしの中で起こりまくってることを政治に当てはめただけにすぎないのかもしれない。
でも人々が無意識(あるいは半意識)に提供しているデータを収集して政治を行ったらヘイトとかが増幅するのでは、と思いつつ読み進めていくと、ちゃんとそれに対する懸念と解決案も書かれていた。差別的な人間をどうにかするよりもアルゴリズムが差別的にならないようにするほうがよっぽど簡単だ、と。まあ私ごときに思いつく批判ぐらい想定済みか...
他人をコントロールしたり理解したりするよりも機械に置き換えたほうがラクなんだろうなあ
あとがきで著者も言及している通り具体案はほとんどない構想だけの本だが、新しい時代を見ることができた気がした。Close

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『オックスフォード哲学者奇行』(児玉聡)
年始は忙しくて全然本が読めなかった...去年も2022年1冊目を読み終わったのは1月22日だった。ここから巻き返して年60冊💪今年は質をある程度保ちつつの量重視でいきたい。
哲学者の思想よりも哲学者その人に主眼をおいて書かれている。知らない人も結構いたがエピソードがいちいち面白かった。まあ真理探究で生計を立てるなんて常人(良い意味でも悪い意味でも)には無理ですから!!!哲学者の人間味溢れるストーリーってなんかいい。思想を学ぶ前に読むのと、多少なりとも学んでから読むのだったら後者のほうが絶対面白いはずなので、勉強してからまた読みたい。
オックスフォードの哲学教育の話も興味深い。チュートリアル制度という伝統的な制度で、大教室で講義とかではなく、学生が指定された本を読んで書いてきたエッセイをもとにチューターと1対1、1対2などの少人数で議論(あるいは一方的に指摘)しあうそう。そりゃ鍛えられますね、学力以外も。
また、ケンブリッジと違ってオックスフォードでは哲学単体を専攻することはできず、必ず「哲学・〇〇学コース」に属して勉強するらしい。中でもPPE(哲学・政治学・経済学コース)は首相経験者を多数輩出しているとのこと。政治家が哲学がっつり勉強してる国良いな...Close

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『存在消滅』(高村友也)
小屋暮らしの著者が死の恐怖について綴ったエッセイ。タナトフォビア(死恐怖症)なんて言葉があるんだな…死について本気で恐怖を感じるのは世間的には「異常」ということなんだろう。
一見理想的なようにも見える小屋暮らしだが、著者はこの国での普通の暮らしがしたくて一度東京に戻ったというのが結構興味深かった(この本の本題からは逸れるけど)。結局隣の芝生は青いんだろうなあ
でも都会での生活に耐えかねて再開した小屋暮らしの様子はツイッターで見てる限りはすごく羨ましい。
世間の人が怖い「死」と著者が怖い「死」はおそらく別物。前者は死ぬまでに経験しなければならない苦痛や死ぬ瞬間が怖いのに対し、後者は自分が死んでからも永遠に流れる時間や絶対に戻ってこられないことが怖い。ちなみに私はどっちも怖いです。そもそも死ぬことに限らず「二度と〇〇できない」ということは何でも怖い(例えば二度と母親の胎内には戻れないとか)。
あと「どうせみんなゴールは死なのに自分は何をやってるんだろう」という虚無感についても書かれていてすごく共感できた。毎日の活動は人生という意味があるが人生そのものは無意味だと断言されてて「そうかあ…」と思った。人生が無意味だと気づきながらも生きるために活動する、というのは人間と動物の違いなんだろう。そう考えると人間は矛盾した存在だという説明もしっくり来た。
テーマは難しいのにすごく読みやすかったのでおすすめです。Close

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『華氏451度』(レイ・ブラッドベリ)
ハックスリー『すばらしい新世界』に続き、ディストピア小説を読もうの会第2弾。やっぱり文系が迫害されてる社会でした。確かに文系の学問が禁じられた世の中なんて想像しただけでぞっとしますね。現状どんどんそれに近づいていっていますが...
「<海の貝>ラジオ」とか「テレビ壁」とか完全にスマホだし!!電車やバスではもう8割以上の人がスマホ触ってますが(自分含め)、私はその光景を見てふと「こんなに大きな体をしたホモ・サピエンスがこんなちっぽけな板の灯す明かりに夢中になって支配されてるなあ」と思うことがあるので身につまされました。
人類の叡智の積み重ね(本、あるいは人文学)が、人類の叡智の積み重ね(科学技術)によって破壊されるのはなんとも皮肉なことですねClose

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『四畳半神話大系』(森見登美彦)
四畳半シリーズってどれが一作目なのかわからず適当に取って読んでは「??」を繰り返してきたんですけどやっと最初の作品が読めました。一回生の時にどのサークル(あるいは組織)に入ろうが結局は憎むべき(?)友人小津と出会い2年間を棒に振るものの、最終的にはなぜか明石さんと上手くいく。セワシくんの東京-大阪理論(「たとえば、きみが大阪へ行くとする。いろんな乗りものや道すじがある。だけど、どれをえらんでも、方角さえ正しければ大阪に着けるんだ。」)を思い出します。自分も人生の岐路的なところでもしあっちを選んでたらどうなっていたんだろうと思うことはよくありますがきっと結果は一緒だったような気がします。結局ゴールは死なわけですし
樋口師匠の「我々の大方の苦悩は、あり得べき別の人生を夢想することから始まる。自分の可能性という当てにならないものに望みを託すことが諸悪の根元だ。今ここにある君以外、ほかの何者にもなれない自分を認めなくてはない。君がいわゆる薔薇色の学生生活を満喫できるわけがない。私が保証するからどっしり構えておれ」が名言すぎる。
あと表紙の絵って四畳半の間取り図だなあと今気づきました。Close

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『哲学の門前』(吉川浩満)
日常生活の中で哲学と出会う瞬間を綴ったエッセイ。最初の方の「哲学に終わりはない」という話と、第5章の「複業とアーレント」(ハンナ・アーレントの<労働><仕事><活動>を個人の営みの中でも上手くバランス取ったらいいんじゃねという話)だけでも読んでよかったなあと思う。他も良かったですが。Close

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『絶対悲観主義』(楠木建)
何かをやる前から「どうせ上手くいかないし」と思ってたほうが絶対ハッピーだよなというのはずっと考えていたことだったので絶対悲観主義というネーミングがすごくしっくり来た。新聞の書評かなにかで見てタイトルだけで読んだら中身は思ってたのと違った。思想的な話かと思いきや、絶対悲観主義の話はそこそこにしてエッセイがメインだった。結構読み甲斐はあったけどClose

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『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(高英起)
10年前の本なので今とは状況も大きく異なる(何より張成沢が生きてる!)が、”米本土打撃計画”とやらをiMac使って立てている写真が滑稽というかなんというか...Close

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『すばらしい新世界』(ハックスリー)
人間は考えない方が「幸せ」になれるし、人生の意味とかそんなものを考える時間があればあるほど「不幸」になる。それは分かりきったことだけど本当に「考えない」でいいのか。何も考えないなら何のために人間として生まれてきたんだ、何の喜びがあるんだと言う話。”野蛮人”のジョンは「快楽に溺れて堕落するくらいなら自分は不幸を選ぶ」と言い放っていた。自分にはそこまで言える覚悟はない。
確かに痛みや苦しみがあるからこそ心の底からの幸福は存在しうると思う。では戦争や飢餓にも存在意義があるというのか...?と考えると堂々巡り。
目の前の快楽だけを追い求める思考停止人間にはなるな、ということですね、、Close

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『陰謀論入門』(ジョゼフ・E・ユージンスキ)
非常に誤解を生みそうなタイトル。別にこの本は「陰謀論の世界へようこそ!あなたもこれで陰謀論者に!」という本ではない(興味本位でそういう本も読んではみたいが)。陰謀論研究の入門書と言うのが一番的確なのか??
概要の後はひたすら用語の定義が続くが、これが面白い。「陰謀」と「陰謀論」は違う。「陰謀」は実際に少数の人々が公共の利益を無視して、あるいは害してまで自分を利すること。一方、「陰謀論」とは陰謀が行われているのではないかという憶測に過ぎない。何かの事件とかが起こってその結果得をした集団がいたからといって、その集団が故意にその事件を起こしたとは限らないしむしろその可能性は極めて低いということ(もちろんゼロではない、それはすごく重要)。
原書がコロナ前に書かれたものだからコロナ系の陰謀論にノータッチなのが残念。とても読みやすかった。Close

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『彼女は頭が悪いから』(姫野カオルコ)
この本はきっと読んだ人の性別、学歴、育った環境やこれまでの経験その他諸々で大きく解釈や着目点が変わるんだろうなと思った。いろんな人の感想が聞きたい。
率直な感想は、書き方が説明臭くてくどい。登場人物のセリフの後にいちいち些細な事を気にしているようでは東大には入れない云々と書いてあったり、半年後の公判ではなんとか~みたいなことが書いてあったり。自分で解釈するからそこまで言わなくて大丈夫!!と何回も思ったが、こうやって作者が解釈をはっきり示しているからこそ読者の反応が二分するのかもしれない。
以下引用
「ではつばさにとって美咲は?そんなことに思考を充てる無駄は、この勉強のできる青年はしない。トニオ・クレーゲルの時代は大学に行くような青年は、かかる思考をすることもあった。現代は、かかる思考をしていたらテスト競争から脱落する。(中略)おれにとってかの人は何なのだろうかと考えるような行動は、東大に入りながら本郷に行くころには二次方程式の解の公式すら使えなくなる文Ⅲのやつらがやっているごくつぶしのような行動であり、難病や飢饉や地雷に困っている世界の人々を救えないアホな行動なのだから、そんな行動を、優秀なつばさはしたことがないし、これからもしないようにしている。」
作者絶対文学部じゃんと思って調べたら案の定文学部だった。そりゃみんながみんな文学部(あるいは文系でも可)だったら世界は大変なことになるけど、ゼロでも大変なことになると思うけどね。文系→理系、あるいは理系→文系の敵意を煽っててすごく考えさせられる。
そしてつばさの兄にめちゃくちゃ救われた。東大生たるもの、学問に対する向き合い方はみんなこうであってほしいけどそういう人ほど弾かれるのが日本の受験制度だと作者は言いたいんだろうなあ。そもそもペーパーテストだけで国内最高峰の大学に入れるのなんて先進国で言ったら日本ぐらいでは?それは良いことでもあるのかもしれないけど。 Close

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『多様性の科学』(マシュー・サイド)
書いてあることはあまりにも当たり前すぎることばかり。同じような経験をしてきた同じような人たちよりも、多種多様な経験をしてきた人たちが集まった組織のほうが複雑な課題への解決策を見つけやすいし、多様な視点があれば致命的なミスは防げる。しかし、こんな至極当然のことでも人間はすぐに忘れて誤解してしまうからこそわざわざこうやって実例やデータを沢山持ち出して本にしているんでしょうが。現にこの本によればあのCIAだって、優秀な組織を作るには採用過程で優秀な人を上から順番に取っていくのが最適解だと考えて画一的な組織を作ってしまったという。
ただ、直感とは反する事実も多かった。最も印象的だったのは、「規模の大きな大学に通っていた人のほうが小さな大学に通っていた人よりも視野が狭い」というもの。読んだ瞬間は逆じゃない?と思ったが、規模が大きいとそれだけ自分と同じような人とも出会いやすくなるがために視野が広がらないそう。なるほど…
そして著者の経歴を見てビビった。
オックスフォード大学哲学政治経済学部を首席で卒業→卓球選手として全英チャンピオン4度、オリンピックに2度出場
どういうこと????異色にも程がある。こういう人が組織での多様性の重要さを説いてるって説得力あるなあClose

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